Speak Nowでコーチとして活動しているShuichiroと申します。
私は日本の大学を卒業した後、新卒で外務省に入省し、南米とアフリカの日本大使館での勤務も含めて約14年間勤務しました。
その後外国際機関に転職し、現在はアフリカのとある国で国連職員として勤務しています。
今回は、私の国連職員になった経緯とグローバルキャリアを切り開くために何が重要かについて、ご紹介したいと思います。
1 国際的なキャリアへの関心: 国家公務員から国際公務員への転身
(1)世界に目を向けた始めた学生時代
私は帰国子女からは程遠く、日本国内の地方で、いわゆる「純ジャパ」として育ちました。
父親は地方公務員で海外生活には全く縁がなく、外国人と接する機会も中学校の英語指導助手(ALT)の外国人先生と週1~2回授業で会う程度で、地元の公立中学校を卒業するまではほとんど英語は話せませんでした。
しかし、海外旅行などを通じて、高校生から徐々に英語学習や海外での生活に関心を持つようになり、高校2年生からは地元の英会話学校に通うようになりました。
とは言え、外務省や国連で働きたいと思うことは全くなく、将来は大手日本企業に入って海外駐在を経験してみたいと思っていた程度でした。
国際機関でのキャリアを目指すようになったのは、20歳の時でした。
夏休みにニューヨークを観光で訪問する機会があり、たまたま国連本部のツアーに参加する機会がありました。
日本人の国連職員による国連本部ツアーに参加した私は、国連本部の中の会議場を見学したり、世界がいかに不平等で、争いや貧困が開発途上国を中心とする世界各地で起こっているかということを学び、開発途上国にいる人々の生活の困難さや貧困に苦しむ人々がたくさんいるということを学びました。そして、将来は国連や国際NGOなど、貧困問題や開発問題に携われるような仕事に就きたいと思うようになっていきました。
一方で、国連職員になるためには、修士号の取得(海外の大学院が望ましい)に加えて、高度な英語力、及びその他の国連公用語を話せることが必要があり、2年以上の勤務経験も必要であることから、大学生当時の私にとっては大変ハードルが高く、夢のまた夢の世界という風に感じていました。
このため、日本政府もODAを通じて開発途上国への開発協力を行っていることもあり、外務省やJICAでの勤務に関心を持つようになりました。そして、就職活動の結果、ご縁があって外務省から内定をいただき、外務省に入省することになりました。
(2) 外交官としてのキャリア
前述の通り、外務省では、南米とアフリカでの約8年間の海外勤務も含めて、14年間勤務しました。
外務省に総合職・専門職として入省すると、全職員に専門言語が割り当てられます。そして、在外研修として、2年または3年間、海外留学して専門言語を学ぶ機会が得られます。私の専門言語はポルトガル語で、研修制度を通じてブラジルに2年間留学しました。
研修後は、自分の研修言語を公用語とする国にある大使館で勤務することになります。私の場合は、ポルトガル語を公用語とするブラジルとモザンビークにある日本大使館で外交官として勤務しました。
大使館では、日本と赴任国の二国間関係の更なる強化のため、政治・経済・文化などの分野での交流促進や、その国に住んでいる日本人への領事関連業務、日本から来る政府要人のサポートや通訳等の仕事を行っています。
外交官の仕事の一つに、2国間会談における通訳業務があります。時々テレビなどで総理大臣が他国の首脳と会談を行う様子が見られますが、総理大臣の隣にいる人が通訳を務める外務省職員です。私も天皇皇后両陛下や総理大臣、外務大臣などの通訳を務める機会がありました。普段は体験できないような貴重な経験をすることができたのは、語学を学び続けたお陰です。
また、専門言語こそポルトガル語ですが、他国の政府関係者などと意見交換をするときや国際会議に参加するときなどは、基本的に英語でやり取りを行うため、どの国にいても英語力を向上させることがとても重要であることを実感しました。
外務省で勤務する中で、国連で勤務したいという想いを改めて実感したのは、モザンビークで勤務していた時のことでした。モザンビークの日本大使館では、開発協力事業などを担当しました。この時に国際機関と連携して、モザンビークを支援する機会が何度かあり、開発協力の現場から少し離れた日本政府ではなく、より現場に近い立場から苦境に直面している人々を支援する国際機関の職員として開発協力事業に携わりたいという想いが強くなりました。
このような想いから、国際機関への転職活動を行い、ご縁があって今の国際機関に転職することとなりました。
(3) 国連での新たな挑戦
国際機関に入るためにはいくつかの方法があります。この中で1番お勧めしたいのは、外務省が毎年50-60名の日本人を様々な国際機関に派遣するJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー) 制度です。
現在、国際機関で勤務する日本人職員の半数以上が、このJPO制度を通じて、国際機関に入職されています。私自身も、同制度を通じて、今の組織に入りました。
JPO制度に関心のある方々は、外務省の国際機関人事センターのHPをご覧いただければと思います。
私は、国際機関での勤務を開始して、まだ1年少々の新米国連職員ですが、様々な国籍の同僚に囲まれて、とても刺激的な日々を送っています。
国際機関といっても、様々な機関があり、それぞれの担当業務は異なります。私の機関は、難民や移民、国内避難民などを対象に支援を行う機関です。難民や国内避難民は、内戦や自然災害などによって住む場所を失い、とても脆弱な立場にあります。こうした人々が、1日でも早く元の生活に戻れるように支援を行っています。
慣れない国際機関での勤務に加えて、純ジャパということもあり、英語面で困難に直面することが多々あります。一刻も早く一人前の国連職員になって、より多くの難民や国内避難民をサポートできるように引き続き精進していきたいと思っています。
2 語学学習でグローバルキャリアを切り開く
(1) 語学力を武器に
外交官や国連職員、商社などのビジネスマンとして海外で勤務するためには、高度な語学力(特に英語)が必要不可欠です。このため、グローバルなキャリアを目指すためには、語学力の向上のための継続的な勉強が欠かせません。
私の普段の業務の大半が英語でのやり取りになりますが、ネイティブスピーカーや英語が得意で経験豊富な国連職員に囲まれて、英語に苦戦しながら業務を行っているのが実情です。このため、国際的な仕事を行う上で英語力向上の重要性を身を持って実感しています。
最近はAIでの翻訳技術がかなり発達してきていますが、やはり直接やりとりを行える方が断然コミュニケーションが取りやすいです。このため、少なくとも英語で自分の言いたいメッセージを発信できて、相手が言っていることを理解できる程度に語学力を伸ばす必要があります。
国連で活躍するためには、英語以外にも、フランス語やスペイン語などの国連公用語や勤務する国の公用語を中級レベル以上まで上げることが望ましいです。例えば、フランス語圏やスペイン語圏で勤務するためには仕事でフランス語・スペイン語を使用する頻度が高いため、これらの言語ができることがそのポジションに応募する条件となっていることもあります。
国連公用語以外でも、駐在する国の公用語ができるにこしたことはありません。私が勤務する国ではポルトガル語が公用語となっており、政府関係者や裨益者との意見交換は基本的にポルトガル語でのやり取りとなります。このため、英語以外の言語を習得すると仕事の幅が広がるので、第二外国語の習得をオススメしたいです。
自分の自戒も込めて申し上げると、可能であれば学生のうちから交換留学などを通じて外国で英語と第二外国語を学んでおくことが望ましいと考えています。大学では、英語や第二外国語の授業が数多く提供されているかと思いますので、ぜひ学生のうちにこのような機会を活用して、第二外国語の習得にも力を入れると良いと思います。
また国際機関で勤務するためには修士号の取得が不可欠となります。このため、語学力の向上や国際的な経験を積むためにも、可能であれば欧米の大学院への留学をオススメします。なお、海外の大学院に留学したり、外国で英語で仕事を行うと、最初の頃は英語での議論や業務の難しさなどに悩むことが多いと思うので、あらかじめ覚悟しておいた方が良いかと思います(笑)
私自身もアメリカの大学院に入学した頃や国際機関に入職した当初は、英語面で苦労することが多くありました(そして今も頻繁にあります)。しかし、英語でのやりとりは慣れの問題だと思いますので、深く悩まずに、日々、語学力の向上を研鑽していくのが良いかと思います。
(2) 効果的なコミュニケーションの技術
日本国内でもそうですが、国際社会で活躍する上でも、コミュニケーション能力はかなり重要なスキルになります。
ここで言うコミュニケーション能力とは、単なる語学力という意味ではなく、プレゼン能力、性別・年齢・職業・出身地・社会的地位などを考慮しつつ、自分とは異なる価値観や環境の相手との異文化コミュニケーション能力、ユーモア力、雑談力など、様々なコミュ二ケーションの技術です。
海外で勤務すると、様々な国籍や文化を有する同僚と一緒に働くことになります。仕事の進め方や考え方、コミュニケーションの方法やレスポンスの速さがそれぞれ異なるので、相手のコミュニケーションのスタイルや文化等を考慮しながら、同僚や取引相手とコミュニケーションを図ることが重要です。
また、海外で勤務していると、様々なイベントやレセプション等に参加して、意見交換をしたり、交友関係を築いていく機会があります。この際に、相手と仲良くなるための雑談力やユーモア力はとても重要です。(これらのスキルは、私自身もまだまだ強化していく必要があると感じています・・・。)
プレゼン力もとても重要です。国際機関では、会議やセミナーにプレゼンタ―やパネリストとして参加することがあります。このような機会に出席者に自分の言いたいことを論理的かつ簡潔に伝えて理解してもらうためにも、優れたプレゼン力が必要となります。プレゼンは慣れによる部分もあるかと思いますので、いろいろな機会を活用してプレゼン力を身につけていくことが重要です。
なお、国際機関では、大した仕事をしていなくても、口が上手で、上司へのアピール力が高い人が出世する傾向にあるとも言われています。これは日本人が苦手とする分野です。私は上司へのアピール力を高めたいと思うことはあまりありませんが、(異文化)コミュニケーション能力は外交官や国連職員として仕事する上で極めて重要なスキルですので、常に向上させていきたいと考えています。
(3) 自分の専門性を深めることの重要性
グローバル社会で活躍する上で、専門性を1つでも持っていることが望ましいと思います。
専門性は多種多様です。人事、財務、法律、統計、IT、環境、経済、金融など数多くありますので、自分が何を好きなのか、何が得意なのかということを考えながら、自分の専門性を見つけていき、勉強や仕事を通じて徐々に専門性を深めていくと良いかと思います。
私自身は、学生時代は法律を勉強していましたが、かといって弁護士と言うわけでもなく、また社会人になってからも語学以外の専門性は特にありませんでした。現在もこれといった自分の専門性を深められておりませんが、今後国際機関で活躍する上で、特定の分野の専門性の深化の必要性を強く実感しています。
将来何をしたいのか、どの分野でキャリアを築いていきたいのかを自問自答し、この分野でキャリアを築いていきたいと言う分野を見つけたら、それに関連する修士号を取得したり、仕事をしたりしてキャリアを構築していくことが重要だと思います。
また、国際社会で活躍するためには、修士号の取得を目指すことをオススメします。国際機関で働く国連職員の大半や外交官の多くが修士号を取得しており、特に国際機関で勤務したいという場合には、修士号は不可欠です。ビジネスマンの多くも、MBAなどの修士号を取得されている方が多いです。
個人的には、学部を卒業した後、一度社会に出て、社会人経験を数年積みつつ、自分が勉強したい分野や専門について模索していくと良いと思います。その上で、大学院に入り、自分の関心のある分野について知識を深めるという流れが良いかと思います。
このように、どのような分野に関心があるのか、どのような専門性を深めたいかを考えつつ、自分の関心のある分野を見つけられたら、同分野での業務経験を積んでいくことで自分なりの専門分野を構築していくと、国際社会で活躍できるチャンスが拡大すると思います。
(4) 好奇心を持つ
では、どのように専門性を見つけると良いのでしょうか?
個人的には、何事にも好奇心を持つことが重要だと思っています。様々なイベントに顔を出したり、色々なジャンルの本を読んだり、旅行をするなどして異なる価値観や、文化、歴史などを学んでいくことが重要です。
好奇心を持って行動して、色々なイベントに参加したり、同僚の業務を積極的にサポートするなどしていると、意外なところでご縁のある出会いがあったり、思いがけない幸運が舞い込んでくることもあります。
仕事面では、ある程度の経験を積んでくると専門性やキャリアの一貫性も重要になると思いますが、まだ若手のうちは、積極的に色々な経験を積むことが重要です。仕事で好き嫌いをせずに、柔軟かつ関心を持って色々な仕事を引き受けて、自分の関心や適性に合ったものを見極めていくと良いと思います
フットワーク軽く、またアンテナを高く張って色々な仕事に挑戦することで、社会人としての経験値を増やすことができ、自分の関心事項や強みに気付くこともできます。
3 終わりに
以上、国連職員に至るための経緯とグローバルキャリアを目指す上で重要と思う点についてご紹介させていただきました。
英語の学習をすることで、キャリア・人生の選択肢は大きく広がりますし、色々な経験を積むことができて人として大きく成長できるチャンスが増えると思います。海外でのキャリアに関心のある方は、日頃から語学力の研鑽をするとともに、自分の専門性を模索・深めていくことが重要です。
今回の記事を読んでいただき、外交や開発協力の分野での勤務に関心を持ってくれる人が増えると嬉しいです。
今後は、語学学習や海外留学、海外での勤務等についての記事を掲載していきたいと考えていますので、お読みいただけると幸いです。
また、Speak nowでのコーチングサービスを通じて、英語学習に加えてキャリア面でのアドバイスもさせていただくことも可能ですので、ご関心のある方はSpeak nowにお申し込みいただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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